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ボストン美術館浮世絵名品展(江戸東京博物館)

江戸東京博物館で明日10月7日から開催の「ボストン美術館 浮世絵名品展」を観覧してきました。



ボストン美術館 浮世絵名品展(公式サイト
会場:江戸東京博物館
会期:2008年10月7日~11月30日

全体に対しての考えがまとまったら改めて東京アートビート・TABlogに記事を掲載させてもらう予定です。

展示は浮世絵の黎明期から成熟期にいたるまでの長い歴史を俯瞰することができる構成となっており、その網羅性と作品のクオリティの高さはかなりのものです。この秋、ぜひとも訪れたい展示の一つではないかと思います。

見所の1つでありながら、うっかり見逃してしまうかもしれないポイントを御紹介します。門外不出、展示さえも制限されている「スポルディング・コレクション」から貴重な版本が出品されています。これは「絵」ではなく「本」である、という解釈から、展示の制限の対象ではないとされ、今回の出展と相成ったそうです。ボストン美術館コレクションそれ自体、目にすることのできる機会が貴重な、一期一会に近い存在かもしれませんが、このスポルディング・コレクションからの出展作品に関しては「見ることが出来た奇跡」というような感慨をより一層強く感じるものでした。
その版本の展示の様子を写真でお伝えします。











展示自体が「浮世絵の教科書」のような構成になっているので、展覧会図録も文字通り「浮世絵の教科書」そのものと呼べるような仕上がりとなっています。
浮世絵は光による退色が激しいため、展示するということ自体が作品に対するダメージであり、会場内の照度はかなり下げられるのが通例です。今回の会場でももちろん適切な管理のもと展示されているので、薄暗い中での作品鑑賞となります。そのような光の足りない環境下でも、自分が過去に見た他の浮世絵の展示と比較すると格段にコンディションのいい、鮮やかな色が残っていることに驚きを覚えます。しかし、おかしな考えかもしれませんが、明るい部屋で図録を手にすると、もっとカラフルな絵を自分の手元で間近で見て楽しむことができます。図録は版画という「モノ」としての存在感を失ったものであり、鮮やかだと思って見ているその印刷された色自体も浮世絵の作り手達が当時意図していた色とは違うものなのにも関わらず。「私が博物館の暗闇の中で必死に目をこらしながら見ているこの“浮世絵”って本当の浮世絵なのだろうか」「江戸時代の人はもっと気軽に素手でつかみながらこれを日の下で見ていたのかもしれないな」などという、愚にもつかぬことをつらつらと考えつつ、今の人がお色気グラビア雑誌を部屋で寝ころびながら眺めるように、家に持ち帰って部屋でリラックスしながら気楽に眺められる図録というのはこの展示の第二会場なのかもしれないな、と思ったりもするのです。自分で「図録に印刷された色は作り手の意図とは…」などと書いておきながらこんなことを言うのも自己矛盾かもしれませんが、浮世絵それ自体も「刷り物」なのであるから、「江戸時代の版画」と「現在の印刷物」、実は本質的には似通った性格を持つ存在なのかもしれない、などとも、やや強引ですが、思います。
とにもかくにも、図録の内容はかなり充実しており、まさしく「買い」の一冊となっています、と申し上げる次第です。



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ボストン美術館とも浮世絵とも、あまり直接的につながりはないかもしれませんが…野次馬根性で里見浩太朗さんを写真におさめてまいりましたのでご覧ください。まるで隠し撮りのような写真ですが、れっきとした囲み取材の時に撮ったものです。



里見さんは今回の江戸東京博物館での展示に使われる音声ガイドのナレーターをつとめてらっしゃいます。最初に今日のプログラムを知らされた時、失礼ながら「水戸黄門の俳優さんか…」ぐらいにしか思っていなかったのですが、同じ空間を共有して近くでお顔を拝見すると、やはり俳優をされている方は美しいお顔をされているなと思いました。声も素敵でした。私はお借りしませんでしたが、ご興味おありの方は、どうぞ展示会場で音声ガイドを借りてみてください。



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テーマ : アート - ジャンル : 学問・文化・芸術

Cow Parade Tokyo Marunouchi 2008 #03

公式サイト
























テレビタレントなどの有名人が割と多く制作しているようでしたが、散歩がてら楽しめる、なかなかいいパブリックアートイベントだと思いました。
写真をご覧になってもわかるように私がまわったのは暗くなってからなのですが、そんな時間でも周りには何人・何組か一生懸命この牛たちを写真撮影してまわっている人たちがいて、みんな結構楽しんでいるなあという印象でした。
丸の内界隈を歩くときがありましたら、皆様、どうぞカメラの準備をお忘れなく。



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Cow Parade Tokyo Maunouchi 2008 #02

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Cow Parade Tokyo Marunouchi 2008 #01

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美術館の混雑について

先日、仕事(ライターとしての仕事ではない別の仕事です)のつながりで、ある大学研究室の実験の様子を覗いてきました。実験の内容を一言で説明すると“美術館の混雑緩和のためのシステム開発”です。そのシステムを応用するのは都内のある美術館。これまでのビジター動員数はまずまずで、お客ぐったりの数時間待ちといったようなことは経験したことがない、というような雰囲気の美術館です。そのような比較的のんびりゆったりとした美術館にて今度「西洋美術のビッグネーム」の展覧会を予定しているそうで、そこで、普段通りの対応ではさばききれない混雑を緩和するための新システムの開発・導入が検討されているとのことなのだそうです。

混雑状態を再現したサンプルの中に実際に入ったりもして楽しく実験を見て、普段の何気ない日常をより過ごしやすくするためにいろいろな知恵が絞られているものだな、と感心しました。ただ、実際に起こっている(これから起こるであろう)美術館の混雑という現象を解決するために、もちろん、こういった新しいシステムを導入するというアプローチは必要なものであり、ありがたいものなのですが、そもそも、どうしてこのようなシステムを開発する必要が生まれるのだろうとも思ったというのが正直なところです。

今度特別に「西洋美術のビッグネーム」の展覧会をするのだが、それは普段の「非西洋美術の、それほどメジャーというわけではないジャンルの美術」の展示よりずっと多くの人が集まってしまう。そこに、アンバランスな集客の一極集中性があるということはきっとだれもが感じているところだと思います。確かにより多くの人に衝撃を与える「マスターピース」というものが存在するのは確かです。多くの人がそれに触れ、それから何らかのインパクトを得たいと願うことも自然なことだと思います。でも、必ずしもごく一部の限られた「マスターピース」の周りに付和雷同にわらわらと群がらなくてもいいのではないか、もしその「マスターピース」がうんざりするような人いきれと他人の後頭部のるつぼの中に落ち込んでしまっているような状況であれば、むしろ個々人が「自分にとってのマスターピース」を探しに、もっと作品と一対一で向かいあえるような環境に分散していくという態度をとってもいいのではないか、と思うのです。

人の性格や嗜好性などといったものは、文字通り十人十色です。五体の感覚を瑞々しくリフレッシュさせるような衝撃を、モネの絵画から受ける人もいれば、鍋島藩窯から受ける人もいるでしょう。モネ展などを開けば、昨今の国立新美術館での記録的な入場者数を樹立した展覧会を引き合いに出すまでもなく、鍋島焼の展示とは桁が違うだけの集客力が見込めるはずです。しかし、論理的な説得力はありませんが、本当にモネの絵画を必要としている人間の数と本当に鍋島焼を必要としている人間の数に、そこまで何十倍・何百倍といった差があるようにも思えないのです。確かにモネは見たい、でも展覧会は非常に混んでいるらしい。そんな時に、モネならいろいろな美術館の常設コレクションで見ることもできる、美術作品を鑑賞するという行為から今の自分自身にとって必要な価値を得たいから今日は鍋島焼を見に行こう、という選択肢を一人ひとりが豊富にもっていてもいいのではないかと思うのです。

具体的な統計をひっぱってこられず恐縮ですが、日本人はとてもとても展覧会好きなのだそうです。美術館などの企画展の入場者の数がとても多いそうですし、会期末の長蛇の列なども多くの人が経験あるところだと思います。美術に触れに行きたいという情熱と行動力のポテンシャルは高いのでしょう。その力を、誰かの言説の集合によってマスターピースとされた作品ではなく、自分の目で体で感じて傑作だと思ったものを愛でるために歩いて行くエネルギーへと一人ひとりが転換してくれることを、と願うものです。




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